何度やっても同じ

ただの日記

ひとり会社のための減資のしかた―(2)会社側の会計・税務編―

前回「ひとり会社のための減資のしかた―(1)登記編―」の続きだよー。繰り返すけれども、かじっただけの素人なので間違ってたらごめんなさい。

今回は会計と税務。これらの処理上、取引は減資と払戻しに分けられる。作業が発生するタイミングは、

  1. 減資の効力が発効したら、実際に振込などで払い戻しをおこなう
  2. 減資および払戻しの取引を記帳する(会計)
  3. その年度が終了し、法人税申告をするときに調整をおこなう(税務)。あんまりないと思うけど、減資効力発効と払戻しの間で年度が終了してしまった場合、税務処理も二度に分かれる。めんどくさいからそういうことはやめておこう。

まずは払い戻し

多額だし通常銀行振り込みかな。ふつうに、株主(=たぶん自分)にお金を振り込んでおく。

会計処理―仕訳はとても簡単

減資と払戻し、いずれの取引も、会計処理はごく簡単。以下の仕訳をしておく。「現金預金等」は自社の状況に合わせて「普通預金」などに置きかえる。自分の場合、社長に貸しがいくらかあったのでそれと相殺した部分もあったり。

減資時
資本金 9,000,000 / その他の資本剰余金 9,000,000
払戻時
その他の資本剰余金 9,000,000 / 現金預金等 9,000,000

減資効力発効後はとりあえずここまでやっておけば、あとは法人税申告まで減資のことは忘れておいても多分オッケー。

税務処理―払戻額のうちみなし配当になるのはいくらか

さて、法人税申告の時期がやってまいりました(今、自分がまさに)。

会社には資本剰余金のほかに利益剰余金があるはずで、「今回の減資にともない払い戻したお金はすべて資本剰余金から出ているものであって、利益剰余金から出ているわけではない、つまり配当ではありません」と勝手に決めることはできない。払い戻したお金は、会社のB/Sの数字にもとづいて、そのうちのいくらが資本剰余金の払戻しで、いくらが利益の分配=みなし配当として扱われるべきかが決まることになっている。実務面では、その計算結果にもとづいて、法人税申告時に別表四と別表五(一)に記載が必要。

また、一部がみなし配当として扱われることは、この後、払戻されたお金を受け取った株主側の税務処理に関わってくる。株主側の処理は次回書く予定だけど、ひとつ言っておくと、会社の利益剰余金が多い場合はどうあがいても配当所得や譲渡所得が発生し、それに税金がかかることになる。たぶん、株式消却による有償減資では、株主は会社に株を売却する対価としてお金を得るので、配当は発生しないけど、でも剰余利益があるのであれば自分か会社のどちらかに譲渡益が発生するような気がする。このへんはまだよくわかってないけど。

さて、みなし配当の計算方法であるが、前回紹介した書籍からちょっと抜粋してみよう。前提として、

資本金等の額 xxx / 現金預金等 9,000,000
利益積立金額 yyy /

というふうに、支払った現金預金等の借方が、資本金等から捻出した分と利益積立金から捻出した分(これがみなし配当)にわかれるとして、この借方の「資本金等の額」「利益積立金額」の算出方法は以下のように書かれている。

資本金等の額=減資資本金額又は交付金銭等の額
減資資本金額>交付金銭等の額 ∴交付金銭等の額
減資資本金額=資本金等の額×割合
割合(1を超える場合は1)=
 減少した資本剰余金の額/(払戻し等の前事業年度末の資産の帳簿価格−負債の帳簿価格)
 (小数点以下3位未満切上げ)
利益積立金額=交付金銭等の額−減資資本金額

割合の計算式で分数をつかっている部分は、便宜上「/」をつかって表現した。

この本には、これに具体的な数字を適用した事例が載っているので、それと照らし合わせてひとつずつ読み解いていくとどうにか理解できた気がするけど、非常に悩んだ。この本には、事例以外にこの式の意味について解説している箇所はない。引用の1行目と3行目に「資本金等の額」というのがあるけれど、この2つは意味が違ったりする。2行目も一瞬とまどう。一般的な式に「∴ゆえに」ってどういうこと? 左側の条件式を満たさなかった場合についての言及もない。おそらく「減資資本金額と交付金銭等の額のうちいずれか小さいほう」という意味だと思うけど、確信できないので、保留しながら読み進むしかない。会計とか税務やっている人にとっては普通の論理表現なんだろうか。

愚痴はこのへんにして、この一連の式を、自分の最終的な解釈で言い換えると、次のようになるのだった。ただし、次に述べる計算方法は、上述のそれと厳密にイコールではない。B/Sの数字が特殊なケースでは正しい結果にはならないもしれないけれど、今回のテーマである「ひとり会社のための」ケースでは問題ないでしょう、たぶん。少なくとも計算式がやりたいことを理解する手助けにはなるはず。

計算方法

この計算に必要な数字は以下。

  • 【払戻額】……今回の減資にともない株主に払い戻した額
  • 【純資産】……払戻し前年度末の帳簿上の純資産
  • 【資本金等の額】……純資産のうち、資本金や資本準備金の総額
  • 【利益積立金額】……純資産のうち、利益剰余金の総額

求めたい数字は【払戻額】のうち【資本金等からの払戻額】と【利益積立からの払戻額】。当然次の式が成り立つ。

【払戻額】=【資本金等からの払戻額】+【利益積立からの払戻額】

で、求め方なんだけど、もっとも単純なケースでは、次の式が成り立つ。

【資本金等の額】:【利益積立金額】=
  【資本金等からの払戻額】:【利益積立からの払戻額】

単純に、資本金等の額と利益積立金額の比率がそのまま、払込額のうちいくらが資本金等から捻出され、いくらが利益積立から捻出されたのかの比率になる。とても直感的。この式をつかって実際のそれぞれの払込額を求めるのは簡単だとおもうので省略する。

では、上記の単純なケースに該当しないとはどういう場合か。

まず利益積立がマイナスつまり損失がある場合、上の比率で計算すると、【資本金等からの払戻額】が【払戻額】より大きな値になり、一方で【利益積立からの払戻額】がマイナスになるので、そのときは、【払戻額】を全額【資本金等からの払戻額】とし、【利益積立からの払戻額】はゼロにしてしまえばよい。

次に【純資産】のなかに、【資本金等の額】と【利益積立金額】以外の数字が含まれる場合。会社が自己株式を保有している場合などがこれにあたる。この場合のことは、正直よくわからない。書籍にかかれていた元の計算式をもちいると、会社に利益積立がある場合でも【利益積立からの払戻額】がゼロになったりして、そのことの意義がそもそも理解できなかった。何か勘違いしているのかも。

実際に計算してみる

さて前回、会社のB/Sは
資産 1,300万
負債 100万
資本 1,200万
 (資本金 1,000万)
 (利益剰余金 200万)
で、減資額900万ということにしていたので、その数字を使って計算してみると……

1,000万 : 200万 = x : (900万 - x)

これを解くと、x = 750万。

資本金等の額 7,500,000 / 現金預金等 9,000,000
利益積立金額 1,500,000 /

ということになる。

税務処理―別表四と別表五(一)の記入

スキャンとかめんどうなので、テキストで説明してみる。これでよく分からない場合は、 この書籍に書き方はちゃんと載っている。

別表四
  • 加算項目に「みなし配当」というのを自分で追加して、総額に上でもとめた【利益積立からの払戻額】である 1,500,000 を記入する。処分は全額社外流出とする。流出事由は「配当」と書いておく。
  • 減算項目に「利益積立金減少額」というのを自分で追加して、総額に 1,500,000 を記入する。処分は、全額留保。

これでオッケー。この2つによって、会社の所得金額は差し引きで変わらないものの、1,500,000 円が留保からマイナスされ、社外流出される。

別表五(一)

別表五(一)への記入は、2つに分けられる。先に記入した別表四を参考に利益積立金額を調整するのと、【資本金等からの払戻額】 7,500,000 円を資本金等の額から減少させること。

  • 利益積立金額の計算は、区分に「資本金等の額」というのを自分で追加して、当期の増額分として △1,500,000 と記入、差引金額にも同様の額を記入する。
  • 資本金等の額の計算は、「資本金又は出資金」の当期減額分として、9,000,000 と記入、「その他の資本剰余金」という項目を追加して当期の増減両方に 9,000,000 と記入、「利益積立金額」という項目を追加して当期の増額分として 1,500,000 と記入。なんかよくわからないが、これで全体としては差引で資本金等の額が 7,500,000 円減ったはずである。

以上〜。